強引社長といきなり政略結婚!?
両親を亡くし、一成さんの身内はおじい様だけ。そのおじい様の反対を押し切ってまで結婚するわけにはいかないという、彼の気持ちもわかる。たったひとりの身内だからこそ、祝福してほしいと。
ふたりが睨み合ったまま、時間だけが過ぎていく。呼吸するのも憚れるほどピンと張りつめた空気だった。
それを打ち破るようにして、リビングのドアが開く。
「お茶でもいかがですかー?」
ここの家政婦、真紀さんだった。
彼女が遠慮なしに入ってきた途端、部屋の空気が和らぐ。
「おいしい日本茶をいただきましてね、なんでも天皇杯で金賞をもらったとか。味わい深いお茶でございますので、ぜひぜひどうぞ」
真紀さんがひとつずつ茶碗をテーブルに並べていく。
「ありがとうございます」
私がお礼を言うと、彼女は顔をくしゃっとさせて笑った。
もしかしたら、ドアの向こうで中の様子を窺っていたのかもしれない。あまり芳しくない展開をなんとかしようと、意気込んで入って来てくれたのかも。