強引社長といきなり政略結婚!?
「あら、大旦那様、お顔の色が優れませんね。あまりカッカしては体に毒ですよ。お茶を飲んで気持ちを穏やかにしないといけませんね」
茶卓を持ち上げ、会長に手渡す。
「わしゃ、別に喉は渇いとらん」
おじい様が子供みたいに拒否すると、真紀さんは「脳梗塞や脳溢血で倒れたいですか?」と脅す。
それを聞いて焦ったのか、おじい様は渋々といった具合にお茶を口に含んだ。
「大切なおぼっちゃまの頼みじゃないですか。ひとつくらい聞いて差し上げてもよろしいかと思いますよ。天国に行った時に大奥様から叱られませんか?」
「な、なにを言っておるんじゃ、真紀は」
おじい様は口の中でなにやらブツブツと言い続けた。
どうも真紀さんには、おじい様も歯が立たないように見える。
一成さんはそんなやりとりを見慣れているのか、穏やかな笑みを口元に浮かべていた。
「では、私はこれで失礼いたします」
真紀さんはそう言って頭を軽く下げ、疾風のごとく出て行った。