強引社長といきなり政略結婚!?
祈りを込めてキーを回すけれど、ブルンという音が一度鳴るだけで動きだす気配がない。
カートに乗せられたおじい様は完全に意識を手放してしまったようで、椅子に体を預けたまま動かなくなった。呼吸がまだあるとはいえ、もたもたしていたら危険だ。
確か、クラブハウスにAEDが設置してあったはず。
「日下部さん、私がおじい様を背負っていきます」
「は!? なにを言っているんですか!?」
「だって、カートが動かないんですから! とにかく私の背中におじい様を!」
その場に体勢を低くして、両手をうしろへ伸ばす。
「日下部さん! 早く!」
「あなたに背負って歩けるわけがないでしょう。僕が背負います」
「いいから早く!」
そんな押し問答をやっている時間はない。
私の剣幕に面食らったような日下部さんは、渋々ながらも「わかりました」とおじい様を私の背中へ背負わせてくれた。
小柄で痩せて見えても、やはり男性。
その上、意識を失くしているせいでずっしりとした重さを感じる。