強引社長といきなり政略結婚!?

それでもなんとか立ち上がり、足を踏み出した。


「日下部さん、救急車の手配と一成さんへの連絡をお願いします」


私を脇からサポートするように歩き始めた日下部さんに言うと、彼は「わかりました」とスマホをポケットから取り出した。
今から呼んでおけば、クラブハウスに着いてすぐに処置をしてもらえるだろうから。

あとどのくらいの距離があるんだろう。起伏のあるところだけに、すぐに息が上がる。
何度となく立ち止まり、おじい様を背負い直す。

早くしないと。手遅れになんて絶対にさせない。たったひとりの身内を一成さんから奪うわけには……。

私の中には、そんな意地しかなかった。


「交代しましょう」


日下部さんにそう言われても、「いえ、大丈夫です」と答える。今、立ち止まったら、そこから動けなくなってしまいそうだったから。
それに、おじい様が倒れた原因は私にもある。私がムキになってゴルフ対決に挑んだりしなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
だから、なにがなんでも助けなければ――。

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