強引社長といきなり政略結婚!?

「あなたという人は、本当に無茶ばかりする人ですね」


日下部さんに呆れられるのは、これで何度目なのか。数えたらキリがないように思えてくる。
日下部さんは大きなため息を吐きながら、「おかしな人ですね、まったく」と付け加えた。

それに反論する余裕は、当然ながら私にない。腕の感覚はなくなり、足は惰性で動かしているような感じ。気力だけで歩いているようなものだった。


「あと少しですよ」


建物が見えるところまで、ようやく来たらしい。日下部さんに言われて顔を上げると、白いヘルメットに白衣を着た人の姿が見えた。
到着した救急隊員かもしれない。担架を持って、こちらに走ってくる。


「大丈夫ですか? あとはお任せください」


肩を弾ませながら来た救急隊員は、私の背中からおじい様を下ろし、担架に横たわらせた。
急に重しがなくなり、私はその場にヘナヘナと座り込む。


「よろしくお願いします」のひと言すら声にならなかった。

< 300 / 389 >

この作品をシェア

pagetop