強引社長といきなり政略結婚!?
私とは比べものにならない速さでおじい様が小さくなっていく。
「では、僕は会長に付き添いますので。……大丈夫ですか?」
肩で息をする私に日下部さんが声をかける。
逆光のせいで、顔を上げても日下部さんの顔が見えない。一応心配してくれているのか、声色は優しかった。
「……は、い……。あとは……お願い、します……」
「もちろんです」
救急隊員を追うように日下部さんが走り出す。綺麗なフォームに見入っていると、背後に人の気配を感じた。
「驚きました」
そう私に声をかけてきたのは、綾香さんだった。
一心不乱にここまで来たせいで、彼女の存在を忘れてしまっていた。
びっくりしたことに、彼女は自分のゴルフバッグの他におじい様と私の分まで肩にかけて持って来てくれていた。華奢な体をした彼女の、どこにそんな力があるのか。