強引社長といきなり政略結婚!?
「――すみませんでした!」
慌てて立ち上がり頭を下げる。ようやく呼吸は整ったものの、膝がガクガクだ。
「大丈夫ですか?」
彼女が私にハンカチを差し出す。
そうされて初めて、額に汗が噴き出ていることに気づいた。
「ありがとうございます。でもハンカチなら持っていますので」
ポケットからハンカチを取り出し、額を押さえる。
「男の人を背負って二キロ近くも歩く女性を初めて見ました」
綾香さんは、私に初めての笑顔を向けた。
「……ですよね。私もこんなことは初めてです。ゴルフバッグ、ありがとうございました」
勝負は中途半端になってしまったけれど、あのまま何事もなく続けていたとしてもスコア差は開いていくばかりだっただろう。
私の負けは確実。