強引社長といきなり政略結婚!?

おじい様の許しは得られなくなった。
一成さんは成果をあげたのに、私は大口をたたくだけで終わってしまったことになる。


「綾香さん、今日はお時間を取っていただきありがとうございました。さすがはセミプロというか。ちょっとでも勝てるんじゃないかと思った自分が恥ずかしいです」


結局はおじい様とライバルの綾香さんに無様な姿をさらしただけ。一成さんとの結婚は、近づくどころか遠ざかってしまった。


「汐里さんって変な人ですね」

「……え?」


初対面に近い人にそんなことを言われるのは初めてだ。
綾香さんは、なぜかクスクスと笑っている。


「それじゃ、私はこれで失礼します。あ、おじい様のゴルフバッグはお願いしてもいいですか?」

「え? あ、はい……」


そう言われて、ノーとは言えない。
私がもたついているうちに、綾香さんは自分のゴルフバッグを肩にかけて歩きだした。
颯爽と歩く彼女をしばらくボーっと見つめたあと、私もゆっくりと足を踏み出したのだった。

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