強引社長といきなり政略結婚!?
本当に油断ならないんだから!
お嬢様の嗜みとして、護身術だって習ったのだ。私に手出ししようとしても無駄なこと。
「汐里ちゃん、許してやってくれよ」
もうひとりのお客に懇願され、ゆかりちゃんには「汐里さん、その辺で……」と宥められ、仕方ないとばかりにパッと手を離した。
「おぉイッテー。こりゃ結婚どころか、当分彼氏も無理だぞ」
余計なひと言を加えた彼をもう一度懲らしめようかと思った時だった。私の目の前に大きな影が立ちはだかる。
なんだろうかと見上げれば、それはついさっきゆかりちゃんと噂していた“イケメンサラリーマン”だった。
座っていた時にはわからなかったけれど、百六十五センチの私でも見上げるくらいの高身長だ。たぶん、百八十センチはあるだろう。
端正な顔立ちに薄っすらと笑みを乗せて、私を見下ろしている。
「あの、なにか……?」
もしかして、注文したものはまだなのかという苦情かもしれない。
ちょっとした緊張に体を硬くした次の瞬間――。