朝はココアを、夜にはミルクティーを
通常ならば、あの定食屋から私のアパートまでは車で十分もかからないくらいの距離である。
しかしながら吹雪で視界不良というのと、雪道ということで走る速度を落として運転したため、かなり時間がかかってしまった。
アパートの駐車場から家に入るまでの短い距離を歩いただけでも、自分の身体に雪が張りつく。
ウールのコートにベタベタとくっついた雪を振り払ってから鍵を開けて家の中へ入り、すぐさまコートは脱いだ。
早いところこのコートは暖房をつけて乾かさないと。
まずは真っ暗なリビングに電気を、とスイッチを押した。
─────部屋は暗いまま。
あれ?と、思わず眉を寄せる。
何度もスイッチをつけたり消したりするものの、電気はつかない。
まさか、こんな時に電気が切れたとか?
少し前にLEDにしたような気がしたんだけど不良品だったのかなと思いながらも、キッチンの電気をつけようと手を伸ばした。
……やっぱり、電気がつかない。
「どうして……?」
電気代は引き落としにしているし、引き落とし口座にも十分すぎるほどのお金はあるはずだ。
そこでひとつの可能性を思いついた。
まさか………………。
慌てて寝室へ行き、同じように電気をつけようとしたがつかない。
暖房を入れようとエアコンのリモコンを操作しても、うんともすんとも言わない。
─────停電だ。
カーテンは開きっぱなしなので、そこから外の様子をうかがう。
うちだけじゃない、どうやらこのあたり一帯が停電になっているようだ。
真冬のこの時期に停電なんて、最悪すぎる。
現在の室温は分からないが、相当冷えていて床がひんやりと足をさらに冷たくする。
雪下ろしやらなんやらで身体も冷えているし、この状態ではお風呂も沸かせない。
唯一、キッチンはガスコンロだからお湯だけなら沸かせる。
さっき脱いだコートをハンガーにかけて、クローゼットから別のダウンコートを取り出して着込んだ。
靴下も厚手のものに履き替えて、少しでも暖をとるためにキッチンでお湯を沸かした。