最初で最後の恋だから。ーセンセイー
遠くから声がする。

アイツは足をどけるとチッと舌打ちする。

「今日はこの辺にしてやるよ。」

(どうして、いつまで私はこんな目に遭うの)

近づく声の反対方向から水飲み場へ向かった。

体育館裏のそこは部活がお休みのテスト期間中は人は居ない。

今が暑い時期で良かった。

私はざっと髪を水に濡らした。

乾くまで、どこにいよう。

人気はまばらだけど誰にも会いたくなかった。

どこに行こうか迷った挙句、私は家庭科棟の非常階段に座っていた。

(ここなら、誰にも会わない)

滴が頬を伝う。

今なら誰も見ていないから。

涙は誰にも解らない。
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