徹生の部屋
ウォールナットのフレームのセミダブルベッドは、圧迫感のないようにロータイプ。
ベージュの遮光カーテンを引いた窓際には、すっぽりと身体を包んでくれるように座り心地のいいひとりがけのソファ。
白木のローチェストは、お祖母さまから譲り受けた大切な和装小物などもしまいたいという要望から総桐だ。
洋風なのにたとう紙ごと収納できるのは、フルオーダーの強みである。

唯一この部屋で古い歴史を感じさせる家具は、壁に沿うように置かれたドレッサーだった。
オーク材の深い色合いながら、随所に使われた曲線が優美な女性らしさを醸すそれは、曾お祖母さまの嫁入り道具のひとつだった聞いている。
この部屋のリフォームを決めたときに、お母さまから譲られたそう。
揃いのスツールに座って、年代物なのにピカピカの鏡を覗けば、いつもより三割増しくらいでキレイに映るような気がした。

カーテンやカバー類といったファブリックはナチュラルな色で統一し、壁に使用されている珪藻土は、調湿、消臭に優れている。

部屋全体が、身体にも心にも優しい造りに仕上げられていた。

「使ってくれてるんだ」

ベッド横のサイドテーブルの上に、ガラスボールに入れたヒノキチップをみつけて嬉しくなる。
すべての打ち合わせが終わり、あとは業者の納品だけとなった日に、私からプレゼントしたものだ。

微かに香るヒノキ。居心地抜群の空間。
ここが、主が留守中のお客さまの部屋だということも、訪問の目的も、私は束の間忘れてしまっていた。

無垢フローリングに脚を投げ出し、ベッドに寄りかかる。
大量のアルコールとキャパオーバーで働いた心臓の疲れのせいか、羊の代わりに天井板の木目を数える必要もないくらい睡魔はすぐに訪れた。








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