公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

歳下の少女に叱られたリッキーは、面白くなさそうに口を尖らせる。

それでも心に堪えたようで、「クレア、ごめん」と謝ってくれた。


育ち盛りの少年だから、体が肉やチーズに飢えているのだろう。

私を困らせたくて文句を言ったわけじゃないと知っているので、彼の頭を撫でて慰めた。


「メアリーの病気がよくなれば、薬代はかからない。またベーコンが買えるわ。だからリッキーも、メアリーが早くよくなるように祈ってあげてね」


子供たちから離れた私は、また丘を少し上り、孤児院の建物の前に着く。

元は白塗りの外壁は今では灰色に汚れていて、ひび割れの補修の跡だけが白い線となり目立っていた。

平屋の横長の孤児院の扉を開け、中に足を踏み入れる。

廊下を横切りもう一枚の扉を開けて、声をかけた。


「こんにちは、シスター。薬を持ってきたわ」


広々とした明るい空間は、連なる質素な長テーブルと椅子で埋まってしまいそう。

ここは子供たちの食堂であり、読み書きを習う勉強部屋でもあり、歌を歌ったり聖書を読んで祈りを捧げる場所でもある。

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