公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
子供の足元には露店で売られている、カラメルを纏った揚げ菓子が転がっていた。
それらの状況から判断するに、少年が貴族とぶつかり、菓子のカラメルで上着を汚してしまったということのようだ。
「ごめんなさいって謝ってるのに!」と、子供は泣きながらも強気に反論している。
「僕は謝ったんだから、おじさんも謝ってよ。落ちちゃったお菓子も弁償して」
「なんだと? このわしに楯突くとはなんと生意気な小僧だ。子供とはいえ容赦せぬぞ」
取り巻く群衆は騒めいても、少年を庇おうとする者はいなかった。
「これはマズイな。宥めにいくか?」「俺にはそんな勇気はねぇよ」と聞こえた会話から、皆、あの貴族を恐れていることが分かった。
私の中にカッと怒りが湧く。
助けない者たちにも、子供の不注意を許さない貴族にも。
前に立つ薄情な傍観者たちを掻き分けると、私はためらわずに輪の中へ飛び出す。
それから少年を庇うように背中に隠し、貴族と対峙した。