公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

両者の顔を見ながらそんなことを考えていたが、ジェイル様の花嫁候補の話題には、それほどの興味はない。

もし私が彼の妻の座まで狙おうと企んでいたのなら、心の中はさぞかし忙しかったに違いないが。


アクベス侯爵の注意は、完全に少年から逸れていた。

下ろし立ての上着についてはもう触れず、蔑むような目で私を見て、また鼻を鳴らす。


「大方、容姿だけで雇われた地位もない家の娘だろう。オルドリッジ公爵、侍女を側に置かれるなら、躾はしっかりとされた方がよろしいですな」

「雇ったばかりで躾の最中なのです。今は大目に見てやってください」

「いいでしょう。今日のことは忘れるよう努めます。そろそろ時間なので、これで失礼します。陛下に呼ばれているものでしてな。今度はルイーザも一緒にお会いしましょう」

「ええ、ぜひ……」


アクベス侯爵の従者らしきふたりの青年が、人垣の中に混ざっていた。

侯爵が背を向けたのを合図に、見物人たちに指図して道を開けさせ、ワインレッドの上着の背中が悠々と馬車の並ぶ方へと遠ざかる。


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