公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~


「怖がらせないで。小さな子供相手にーー」

「小さな子供だから、記憶に残るように言っているんだ。お前の叱り方は優しさじゃない。貴族に対する接し方を教えてやらねば、この子はいつか命を落とすぞ」


命って、ちょっとぶつかっただけなのに大げさな……。

そう思う一方で、そういうものかしら?と考え始める。

ジェイル様が気さくに接してくれるから、王都に住まう貴族全体にも同じような感覚でいたのは否めない。

ここがゴラスで、ぶつかった相手がゲルディバラ伯爵だったとしたら……確かに子供の不注意では済まされず、命の危険を感じるところだ。


私より、ジェイル様の言い分が正しそう。

そう結論づけた私は、少年を抱きしめる腕の力を緩めた。

ジェイル様が私から子供を引き剥がし、自分の前に背筋を伸ばして立たせる。


「これから言うことをよく覚えておけ。身なりのよい人間が通れば、道を開けろ。万が一ぶつかってしまったら、地に額を擦りつけて謝れ。どんな理由でぶつかっても口答えするな。怪我をしたくなければ、なるべく貴族に関わり合うな。分かったか?」


脅すような低い声に、少年は震えながら頷いた。

ジェイル様の言葉は恐怖の記憶と共に、この子の胸にしっかりと刻まれたことだろう。

可哀想に思ってしまうけど、今後を考えたら、こうするのが正しいのよね……。


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