公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
麗しき微笑とともに帽子にのせられた手の重みに、心地よさを感じていた。
あのとき、ジェイル様が私を連れていかないと言ったなら、私の命はもうこの世になかったことだろう。
彼の言う通り、視察団の馬車を止めるなんて、ゲルディバラ伯爵の逆鱗に触れる行為をしたのだから。
しかし、あのときは死をも覚悟で飛び出したが、さっきは違う。
アクベス侯爵に無礼を働いても、まさか命を取られるほどの状況になるとは少しも考えなかった。
それはジェイル様が助けてくれることを、暗に期待していたからなのかもしれない。
それはつまり、私が彼を信頼し始めているということだろうか……?
そんな疑問が頭をよぎり、じっと琥珀色の瞳を見つめた。
すると、私の視線を遮るように帽子の鍔を引き下ろされる。
「ゴラスよりここは日差しが強い。上を向けば顔が日焼けするぞ」
冗談めかしたように言うその声は笑いを含み、私の腰に腕を回して「行くぞ」と歩みを促す声は、なぜか機嫌がよさそうだった。