公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
灯台の入口は塗装の剥がれかかったアーチ型の板戸。
それを彼がノックすると、中から薪を抱えた中年の男がひとり、顔を覗かせた。
木綿の煤けたシャツに、皺の寄った茶色のベストとズボン。
鍔のついた鼠色の帽子の下には愛想のない日焼けした顔があり、「なにか御用ですか?」と仏頂面で聞いた。
「仕事中にすまないな。この娘を灯台に上らせてやりたい。中に通してくれ」
上着の内ポケットに手を入れたジェイル様は、銀貨を数枚取り出して、男の手に握らせる。
すると男は幾分愛想をよくして、「どうぞご自由に。落ちんようにだけ気をつけてください」と、私たちを中に入れてくれた。
ドアが閉められると、内部は随分と薄暗い。
他に人の姿はなく、男はランプの明かりの下で、黙々と薪を積み上げる作業をしている。
一階のスペースの半分ほどは薪で埋まり、作業机がひとつあるだけで、道具類が乱雑に置かれていた。
最上階との間に階はないようで、くり抜かれたような高さのある空間には、石壁に沿わせた螺旋階段がグルグルと上まで続いているのが見えた。
所々に顔も出せないほどに小さな明り取りの窓が開いている。