公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
昼は薪を割り、日没から夜明けまでここで火を焚いているそうだ。
夜闇の中でも船が迷わないように、海を照らす大切な仕事。
まだ陽の高い今は、燃え尽きた薪があるだけで火の気はない。
海側の壁にはくり抜いただけの大きな窓が三カ所あって、そこから外の景色に注意を移すと……私は息を飲んだ。
なんて美しいの……。
コバルトブルーとエメラルドグリーンが溶け合うような海はどこまでも広がり、キラキラと水面が波打ちながら陽光を反射させていた。
上から見下ろすと、港の様子も一望できる。
大型商船はこれから出航するところなのか、小人のような船乗りたちが甲板を忙しく動き回り、帆を張ろうとしていた。
港は緩やかに弧を描く湾になっていて、整備された波止場から先の海岸線は白い砂浜が続いている。
さらにその先は陸地が急勾配をつけて盛り上がり、緑を生やした岬となっているようだ。
宝石よりも美しく輝く青い海と、透き通るような水色の夏空。
白い羽を持つ海鳥が大空を自由に飛び回り、私には珍しいその鳴き声を、潮風に乗せて聞かせてくれる。