公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
海を初めて目にした私は、「すごいわ!」と自分らしくない無邪気な歓声をあげ、すっかり魅了されていた。
「そういう顔もできるんだな」
そう言ったのはジェイル様で、私の斜め後ろに立つと、腰に腕を回して引き寄せた。
窓から少々身を乗り出していたので、引き戻されたと言った方が適切かもしれない。
海から視線を離さないままに「そういう顔って?」と尋ねたら、「無垢な笑顔」という答えが返ってきた。
それについて、私は首をかしげる。
屋敷の中では使用人に対しても、笑顔で受け答えをしているつもりだったからだ。
「私はそんなにいつもムスッとしているかしら?」
「いや、笑っているときもある。本心を隠した作り笑顔をな……。クレアが心から嬉しそうにするのは初めて見た。連れてきてよかった」
海から視線を外して隣を見ると、琥珀色の双眸がじっと私を見つめていた。
目が合うと、なぜか大きな両手で頬を包み込まれる。
端正な顔が拳ふたつ分ほどの至近距離まで近づいて、私の瞳を覗き込んだ。