公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「あの海鳥はなんていう名前なの?」
「カモメだ」
「カモメ……聞いたことがあるわ。父の故郷の海に飛んでるって、昔、母が教えてくれた……」
美しい景色の中を自由に遊ぶカモメを見ながら、私は生まれたときからの不自由な暮らしぶりを話し始めた。
遊んだ記憶などない。
生きていくためには、子供だってできることをしなければならないのだ。
孤児院の畑を耕していたあの子たちの姿は、かつての私……。
波音を聞きながら、淡々と生い立ちを説明する。
母から聞いた父のことや、母とふたり暮らしの貧しい生活のこと。
母が病死し、孤児院に預けられた二年間のこと。
その後のドリスの宿屋での暮らしぶりについても。
メアリーの薬代を稼ぐために、男たちと駆け引きをして、貢がせていたことも隠さずに話した。
ゴラスでの医療費の高さを知って欲しかったからだ。
ゲルディバラ伯爵が法外な税をかけるから物価は高く、経済は衰退するばかり。
まともな職もない中で、ドリスの宿屋で住み込みの仕事を得られた私はかなり幸運だった。