公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
孤児院は大きな子供を置いておける余裕はないので、十二歳になったら出ていかねばならない。
あの孤児院を出た後の子供たちは、全員が私のような安定した職を得られるわけじゃなかった。
貧しい農家で奴隷のように扱われて命を落とした少年がいたと聞いた。
騙されて娼婦にさせられ、性病で早死にした少女がいた話も。
家も仕事もなく、物乞いをして歩き、孤児院を出た最初の冬を乗り越えられずに、雪降る街角で凍死していく子供もいるという。
どんなにひどい町でも、領主の許可書がなければ領民が勝手に出ていくことはできないので、みんなゴラスから抜け出せない。
あの町で生きていくのは、かなりつらいことなのに……。
話し終えて、小さな溜め息をついた。
こうして王都でなに不自由ない贅沢な暮らしをさせてもらっていることに罪悪感がある。
私だけゴラスを抜け出したことに、後ろめたさを感じるのだ。
苦しさに襲われて、緑色のドレスの胸元をぎゅっと握りしめ、心の安定を取り戻そうとする。
逃げたんじゃない。
私はゴラスを救うために、ここにいるのだから。
なんとかしてジェイル様に頼みを聞いてもらわないと。
早く目的を果たして、ゴラスに帰らなければ、この胸の痛みは消えないことだろう。