公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
失望を隠せない顔を上げて、「冷たい人ね」と非難すれば、鼻で笑われる。
「お前はなにも分かっていない。救えと簡単に言うが、侵略すれば剣が交わい、多くの血が流される」
「血を流してとは言ってないわ。あの町の税率を下げるよう、ゲルディバラ伯爵に意見するくらいしてくれてもーー」
「他の領地に政治介入しないことは暗黙のルールだ。それを破れば、俺の領地にもどうぞ干渉してくださいと言っているようなもの。なぜ俺が不利益を被らねばならん」
真顔で視線をぶつけ合う私たちの間に、塩辛い風が吹き抜ける。
私たちの今の希薄な関係性では、まだ願いを聞いてもらうことはできないみたい。
それを感じて目を伏せ、俯いたら、軽く握った拳で顎をすくわれた。
額がコツンとぶつかり、唇が触れそうな距離で問われる。
「どうした? お前の魅力で俺を虜にするという企みは、諦めたのか?」
「諦めていないわよ……。でも、それが難しいことに気づいているわ。これまで私に言い寄ってきた男たちとあなたは全然違う。私に心を揺らす素振りは少しも見せないもの。むしろ、その逆に……」