公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
言葉を区切り、小さな溜め息をつく。
思惑とは逆に、今は私の方が胸を高鳴らせているのだ。
こんなに接近されると、嗅がなくてもハッキリとバラの香料を感じて、つい気を緩めたくなる。
琥珀色の美しい瞳に吸い寄せられそうになり、唇が触れそうで触れないこの距離に、心の中は穏やかではいられなかった。
恋などという、くだらない思いを抱いている暇はないというのに、私は一体なにを考えているのよ。
彼の色香に惑わされないで……。
自分を戒めたその刹那、なぜか帽子を取られて床に落とされる。
彼の右腕が腰に回されて、左手は私の後頭部の髪に潜り込んだ。
逃げられないような状態で、唇が触れ合う。
驚いて彼の胸元を強く押して拒絶すると、唇はすぐに離されたが、腕は解けない。
目を見開いている私に、彼はいたずらめかした調子で問う。
「男に貢がせていたくせに、キスは初めてなのか?」
「唇にするのは初めてよ。なぜ? 私を好きでもないのに」
「俺がお前に惚れる必要はない。クレアを俺の虜にして操ってやる」