公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
しかし、ジェイル様は羽根ペンを置くと、書き込んでいた紙を含めた書類の束をオズワルドさんに渡して言う。
「急がせて悪いが、これを今晩中に処理してくれ」
「かしこまりました」
主人に会釈をしたオズワルドさんは、書類を抱えて私の方へと歩いてくる。
いつも通りの無愛想な目でチラリと見られたが、なにも言葉をかけてくれず、彼はドアを開けて執務室から出ていってしまった。
どうしよう……。
これはチャンスだと思い込ませていた決意は、一度気を緩めたことで崩されて、心の中にまた恥ずかしさが広がっていく。
ドキドキと煩い鼓動を静める時間が欲しいのに、立ち上がったジェイル様に「来い」と命じられてしまった。
「どうした?」と聞きながらも、彼の口元はほくそ笑んでいる。
戸惑う感情を読み取られたのかもしれない。
恥ずかしさに悔しさも混ざり、作り笑顔を保持できずに膨れっ面をして、私は彼の指図に従った。
奥の長椅子まで移動した彼は、そこに自分だけが腰を下ろし、目の前に私を立たせた。
前回と同じ成り行きに、やはり裸にならねばならないのだとますます心臓を忙しくさせる。
『脱げ』という言葉を緊張しながら待ち構えていたら……じろじろと私の赤ら顔を注視していた彼が、やがて堪え切れぬといった様子で吹き出し、肩を揺すって笑い始めた。