公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

姓を偽るように言われたのだから、その舞踏会に参加したからといって、辺境伯領を巡る争いに巻き込まれたりしないはず。

私の価値を吊り上げるために参加するのなら、いい機会かもしれない。

彼が私に強い利用価値を見出せば、それと引き換えにゴラスの政治に介入させられる。

彼に操られるのではない。
敢えて利用されてみるのよ……。



それから数時間が経ち、月が西へと高度を下げ始める夜半過ぎに、自室で眠りについていた私は胃の不快感に目が覚めた。

彼の執務室を出る前に、新しいドライフルーツの瓶を渡されて、古いものは今日中に食べてしまえと言われたせいだと思う。

痛むほどではなく、なんとなく気持ち悪いだけ。

水を飲んでから寝直そうと、ベッドから下りてテーブルへ。

しかし、陶器の水差しを持ち上げると空で、汲み忘れていたことに気づいた。

ポンプ式の井戸は一階の別棟にある。そこまでいかなくては水が飲めない。


白い寝間着の上にベージュのナイトガウンを羽織り、水差しを手に部屋を出た。

ここは二階の南棟。階段は北棟へ繋がる廊下の真ん中にある。

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