公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
自然の花畑の中に不規則に並ぶのは、大きさも形も様々な墓石群。
その数は百基ほど。
その中に母の墓もあった。
母も含めて、悪政に苦しめられ、若くして亡くなった哀れな魂は、今なにを思って眠るのか……。
眼下に広がるゴラスの町の中心には、高い石塀で囲われた、要塞のような大きな屋敷がある。
それがゲルディバラ伯爵邸だ。
要塞を睨みつけた私は、いっそのこと、どこかの領主がこの町を侵略してくれないかとさえ思う。
その方が、少しはマシな暮らしができるのではないかと。
私が睨みつけたところで、要塞にヒビが入るわけではなく、溜め息をついて母の墓の前にひざまずいた。
神ではなく、母やここで眠る人たちに祈りを捧げる。
「お願いです。メアリーを救ってください。とても優しい子なんです。どうか彼女に未来を……」
祈りの最中に、町の教会の鐘の音が小さく聞こえてきた。
それは十五時を知らせる鐘の音で、慌てて私は立ち上がった。
いけない、もうこんな時間だわ。
続々と到着する宿泊客の対応に追われるドリスの姿が目に浮かぶ。
早く宿屋に帰って仕事しないと……。
立ち上がった私は、金色の髪をなびかせて丘を駆け下りる。
明日は薬の他にベーコンも買って、ここに来たい。
私に言いよる男たちの顔を思い浮かべ、誰になにを貢がせようかと考えていた。