公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
翌日、荒んだこの町に似合わない水色の澄んだ空が広がっていた。
宿泊客らは午前中のうちに、それぞれの目的の場所へと宿を出ていき、私は空いた部屋から順に掃除をして、ベッドシーツと枕カバーを取り替え、それらを裏庭に運んで洗濯をする。
井戸端にしゃがみ込み、洗濯板にシーツをこすりつけ、両手を泡まみれにしていたら、追加の洗濯物を手にドリスが裏庭に出てきた。
「クレア、これも頼んだよ。さてと、店じまいしてくるかな」
「え?」
『店じまい』という言葉を理解できずに、私は首をかしげる。
この宿に定休日などはない。休んでいられないほどに、貧しい宿なのだから。
疑問に思い洗濯の手を止めていると、木桶の横に汚れ物をドサリと置いたドリスと目が合い、呆れた顔をされた。
「昨日、教えたじゃないか。王都から視察団が来るからって。聞いてなかったのかい?」
視察団……そういえば、孤児院から帰って客の夜の食事の世話をしている最中に、そんな言葉を言われたような。
頭の中で金策を企てるのに忙しくて、聞き流してしまっていたけれど。