公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
鼓動が耳元で鳴っているかのような、大きな音を立てていた。
ジェイル様は確かに私を妻にしようとしている……それを理解しても、納得できない。
なぜ私を?
惚れたわけではないでしょうに。
その疑問を代弁してくれたのは、オズワルドさんだった。
「ジェイル様、お戯れが過ぎます。家も財もない娘を、なぜ。まさかあの美貌に、心酔されてしまわれたのですか?」
執務室内に響いたのは、ジェイル様の笑い声。
それが止むと、低く嘲るような調子の返答が聞こえてきた。
「いくら美しかろうと、俺が女に惚れることはない。恋愛感情など、くだらんな。クレアを妻にすれば……の大義名分ができるだろう。それだけだ」
肝心なところが聞きとれず、歯痒い思いをさせられていた。
私を妻にすることで、一体なんの大義名分ができるというの?
もっとよく聞こうとして、ドアに耳を当てたら、腕に抱えている水差しをぶつけてしまう。
コツンと響いた小さな音に、気づかないでほしかったが、会話がピタリと止んだ数秒後にドアが開けられ、オズワルドさんに見つかってしまった。