公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「クレアさん、盗み聞きとは、はしたない真似を……」


非難の声を聞いた後は、部屋の奥から響く声に「入ってこい」と命じられた。

窮地に立たされた気分で肝を冷やしたが、すぐに思い直す。

見つからなかったとしても、どのみち私はこの扉を開けたことだろう。

私を妻にしようなどど、理由を問いたださずにはいられない状況だったのだから。


執務室内は暖かく、暖炉に薪の弾ける音がする。

彼は長椅子に腰掛けていて、オズワルドさんはドア前で待機。

私だけが彼に近づいて、テーブルを挟んで向かい合った。

ジェイル様は盗み聞きを咎めることなく、「その水差しはなんだ?」と普通の調子で聞いてきた。


「水を汲みに行くところだったのよ」

「呼び鈴を鳴らして、メイドにやらせればいいだろう」

「寝ているのにかわいそう。それに、自分のことくらい、自分でやりたいの」


深刻さのない会話をさせられていても硬い表情を崩さないでいたら、彼は期待外れと言いたげな顔をしてから、フッと笑った。


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