公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「嬉しそうにしろよ。この俺が、お前を妻にしてやると言ったんだぞ」
「お断りします」
「なぜだ? 俺を虜にさせると言ったくせに、妻の座はほしくないと言うのか?」
「ええ。私はゴラスに帰るもの。あなたに願いを聞かせた後に」
なにがおかしいのか高らかに笑う彼は、立ち上がると「下がれ」と命じた。
それは私にではなくオズワルドさんに対してで、ドアの開閉音が背後に響いた後は、ふたりきりになった部屋に緊張が増す思いでいた。
私たちの間にある丸テーブルが蹴り倒され、鈍い音と共に床に重々しく転がる。
驚いた私は後ずさろうとしたが、その前に一歩で距離を詰められ、逞しい腕に捕らえられた。
「帰さん。ゴラスのことなど、忘れさせてやる」
腰に腕が回され、もう一方の手で後ろ髪を鷲掴まれては、逃げることも顔を背けることもできない。
刹那に重なった唇はすぐにこじ開けられ、彼の舌先が私の口内で暴れていた。
陶製の水差しはとっくに床に落ちて、割れている。
力を振り絞るようにして両手で筋肉質の胸元を押すと、唇が離れ、体の距離もいくらか開けることができた。
頬を叩いてやろうと右手を振り上げたが、易々と手首を掴まれ、長椅子の上に引き倒される。
私の体に乗り上がる彼は、狩りを楽しむ獣のような瞳をして、濡れた唇を舌先で舐めていた。