公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「選べ。今この場で初夜を迎えるか、それとも正式な手続きを踏んだ婚礼後のベッドの上か」
ニヤリと吊り上がる口の端を見ると、おそらく彼は私が選べないと踏んで選択を迫っているのだろう。
しかし私は迷うことなく「今ここで」と即答した。
結婚の意思がないのだから後者を選ぶことはなく、処女性にこだわる気持ちなど、ゴラスで彼の馬車を止めたときに捨てている。
「抱きたいなら、抱けばいいわ。ただし私は明日にはここを出ます。他の貴族の屋敷の門を叩いて、あなたにしたのと同じ取引を持ちかける。私の願いを聞いてくれないあなたに興味はないの」
彼の口元から笑みが消えたところを見ると、私の言葉はいくらかダメージを与えることができたのだろう。
睨みつける琥珀色の双眸に気圧されまいと、私も瞳を鋭くした。
しばらくの睨み合いの末、作戦を変更するかのように、急に彼の瞳が優しくなった。
「感心するほどに、気の強い女だ。女も強くなければ生きられぬということか。ゴラスの民には同情する」