公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
どうせ口先だけでしょう。騙されないわ。
でも……。
ゴラスの民に対し、これまで冷たい言動を取ってきた彼が初めて口にした哀れみの言葉に、湧き上がる期待を抑えられなかった。
長椅子の上に抱き起こされて、今度は優しく腕の中に捕らえられる。
彼のブラウスの胸に顔を埋めると、私の好きなバラの香料を嗅がされ、心が揺さぶられていた。
「どうしたらあなたはゴラスを助けてくれるの? 妻にはなれないけど、他に私にできることがあるなら、なんでもするわ」
他の貴族の門を叩くなどど強気な発言をしても、正直言って自信はない。
できることなら、彼に力を貸してほしかった。
今までのように冷たく拒否されることも覚悟していたが、「なんとかしてやれないでもない」と、私の期待をさらに煽るような答えが返ってきた。
「議会が頻繁に開かれるこの時期なら、議題にあげることができる。俺ひとりでは面倒ごとに発展するが、諸侯の連名の元にゲルディバラ伯爵に改善要求を通達することなら可能だろう。それでも、根回しに骨を折ることになりそうだが……」
明るい未来を見せられた気持ちで顔を上げようとした。
しかし、私を抱きしめる腕の力を強められ、再び鼻先を彼の胸元に埋めることになる。
表情が見えないことで、その言葉に嘘はないのか、判断することができなかった。