公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「そうしてください。お願いします。私はあなたに頼るしかないの」と弱さを漏らせば、案の定、つけ入れられる。


「クレア、取引しよう。妻になれないと言うなら、花嫁候補でも構わない。俺に群がる令嬢どもを蹴散らしてくれ。それができたなら、議会でゴラスの窮状を議題にあげてやろう」

「……本当に? その程度のことが、私にやらせたいことなの?」


にわかには信じられずにいると、腕の力が緩んで体を僅かに離され、顎をすくわれた。

琥珀色の瞳を至近距離で覗き込み、彼の真意を読み取ろうと試みる。


真面目な表情を見る限り、嘘はないように思えるけど……どうにも腑に落ちない。

地位が高く国王の補佐まで務めている彼が、ひとりでは花嫁候補者を拒めないというのだろうか。

弱気な性分でもないというのに。

疑問は口に出さずとも伝わったようで、彼は補足を始めた。


「女を酷く傷つけて振るのは容易いが、オルドリッジの名に傷をつけるわけにいかない。俺の花嫁選びは、お前が考えるより遥かに大きく貴族関係に影響する。今までのらりくらりとかわしてきたが、いい加減に疲れてきた」

「それなら、早くひとりの令嬢に決めて結婚してしまえば、煩わしい思いをしなくて済むのではないかしら?」

「お前もオズワルドと同じことを言うんだな。婚姻とは、好きでもない女の機嫌を取り、妻の実家に心を砕く生活のことだ。俺は忙しい。いずれ子を産む女が必要となろうが、今はまだいらない」


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