公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

苦笑いしてドリスにもう一度説明を求める。

それはこんな話だった。


この国の王都は、南にあるエルゴーニュという、ゴラスの百倍も大きな街。

そこから国王の命を受けたオルドリッジ公爵という地位の高い貴族が、この町に視察にやってくるそうだ。

要人を迎えるにあたり、この宿のような安宿は商いを休止するようにと、ゲルディバラ伯爵から御触れが出されたみたい。

その理由は怪しい者を泊めないためと、困窮する町の庶民の暮らしぶりを視察団にみせないためだ。

宿のみならず、庶民の利用する食料や日用品を売る店も視察団が帰るまで営業停止で、メインストリート沿いに建つ立派な店構えの高級店のみ商いを許されるということらしい。


その話を聞いて、私は愚かにも希望の光を見てしまう。

泡だらけの手をエプロンで拭いて立ち上がると、ドリスに笑顔を向けた。


「視察団が来るのは初めてのことよね。国王陛下の耳に、この町のひどい噂が届いたということかしら? 視察の後には、税率が下がられると思う?」


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