公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そこまで話したときに、今まで静かに流れていたピアノ曲が終わり、三十人編成の楽団が軽快にワルツを奏で始めた。
すると、主催者であるマリオット伯爵夫妻が広間の中ほどに進み出て、最初に踊り出す。
それを合図に若い男女が続々とペアを組み、三拍子のステップを踏み始めた。
アクベス侯爵との話は、ここで中断となる。
私はダンスを申し込んできた男性たちの中から、一番近くにいた人に手を差し出し、「お相手を務めさせていただきますわ」と、作り笑顔を向けた。
男性から誘われたら、嫌でも踊るのが貴族女性の嗜みだと教えられているので仕方ない。
汗ばむ手で私の手を必要以上に握りしめ、鼻息を荒くする相手には不快感を覚えるが、私の意識のほとんどはライバルたちに向いていた。
資料によると、花嫁候補者の中で有力者が三人いて、ジェイル様はその三人を私に片付けさせたいようだ。
ひとりは先ほど睨み合ったルイーザ嬢で、他のふたりは、マリオット伯爵の娘のフローレンス嬢と、ペラム伯爵の娘、ディアナ嬢。
まだふたりの令嬢とは挨拶を交わしてはいないが、資料に書かれていた身体的特徴から、ダンスに興じる集団の中にその姿を見つけ出していた。