公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

フローレンス嬢とディアナ嬢を見ても、そのような気持ちは湧かなかった。

ジェイル様と踊っているルイーザ嬢にだけ、どうして私は苛立つの……。


分からないままに、それぞれ別の男性たちと四曲を踊り、五曲目の申し込みの相手には、「後ほど」と約束して今は断り、奥の壁際を歩いていた。

五曲目を踊らなかった理由は疲れたからではなく、フローレンス嬢が泣き出しそうな顔をしてダンスの輪から外れるのを見たからだ。

壁の隅で両手で顔を覆う、十七歳の彼女。

そこに駆け寄るのは母親であるマリオット伯爵夫人で、心配するというよりは、しっかりしなさいと檄を飛ばしているように見えた。


まずは、ひとり目……。

気弱そうな彼女に同情心が湧かないように、心を冷やして、ゆっくりと近づいていく。


「お取り込み中、失礼いたします」


ビクリと肩を震わせて私に振り向いた茶色の瞳は、涙に潤んでいた。

長い栗色の髪を結い上げて、白く細っそりとしたうなじを覗かせる清楚な女性。

濃い水色のシルクのリボンを首にひと巻きして後ろで結び、背中へ流すように長く垂らしている。

ドレスはリボンより薄い水色で、清流を思わせるような装いの彼女は、心までもがすぐに流されてしまいそうに頼りなく見えた。

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