公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

それに対し、目を眇めるようにしてこっちを見るマリオット伯爵夫人は、資料に書かれていた通り、夫の尻を叩きそうな気の強さが表情に透けていた。


「マリオット伯爵夫人とフローレンスさんですわね。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はーー」


名乗ろうとしている私の言葉を遮り、夫人が息巻いて詰め寄ってくる。


「オルドリッジ公爵がお連れになったお嬢さんね。あなたにも言いたいことがありますが、それよりも今はあれよ。一体、どういうことですの!?」


『あれ』と言って指差したのは、ダンスに興じるジェイル様とルイーザ嬢の姿だ。

舞踏会というものは、若い貴族たちが結婚相手を見つけるための交流の場でもある。

相手を次々と変えて踊るのがマナーで、同じ相手と四曲以上を踊るのは好ましくないとされている。

それなのにジェイル様は始まってからずっとルイーザ嬢を離さずに、もう五曲目が終わりそうだった。


娘をジェイル様に嫁がせようと考えている夫人が憤慨しているのはそのせいで、フローレンス嬢が泣き顔をしているのも、おそらく同じ理由。

ということは、彼女はジェイル様に恋い焦がれているということみたい。


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