公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
しかし、女性にしては少々凛々しい、ドリスの眉がハの字に傾く。
「それはないね。ひとつの国と言ったって、他の領地のことに口出ししないのがお貴族様のやり方さ。無用な争いは誰だって避けたいだろ?」
「それなら、どうして視察するの?」
「クレアは幼くて覚えてないんだろうけど、視察団が来るのは初めてじゃない。十年ほど前にもあったさ。形ばかりに国王の威厳を諸侯に示すための視察がね。奴らはまともに調べる気はないよ。ありゃ、単なる娯楽旅行だね」
「そう……」
期待した私が馬鹿だった。
この町はこれからも変わらない。
ゲルディバラ伯爵の強欲な支配からは抜け出せない……。
暗い顔になった私を励ますかのように、ドリスはポンと肩を叩いた。
「そんな顔したって、なにもいいことはないさ。せっかくだから休日を楽しみな。洗濯を終えたら遊びにいっといで」
そう言って、「ほら、枕元に置いてあった客のチップだよ」と、私に五セルダ硬貨をくれた。
「ありがとう」とお礼を言って受け取っても、これっぽっちじゃバケット一本買えないし、遊びに行けと言われても、遊び方も知らない。
孤児院に行き、メアリーを見舞い、シスターの手伝いをすること以外にやりたいことは見つけられなかった。