公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
大広間に隣接する応接間の扉は解放されていて、招待客が自由に出入りしている。
中に入ると、いくらか舞踏曲の音色は遠のき、代わりに貴族たちの語らいの声で満ちていた。
壁際にクロスをかけた長テーブルが並べられ、山のようなご馳走が大皿に盛られている。
側には使用人がいて、貴族が指す料理を小皿に取り分け、給仕に勤しんでいた。
六席を用意した丸テーブルは八つ設置されていて、招待客がワインと料理と交流を楽しんでいる。
ご馳走の山なんて、見ているだけで胸も胃も苦しくなるけれど、仕方なく歩み寄り、魚介をトマトソースで煮込んだ料理を少量取り分けてもらう。
ジェイル様はローストビーフの皿を手にし、私たちは窓際の丸テーブルのひとつに歩み寄った。
「同席しても、宜しいでしょうか?」
ジェイル様が声をかけたのは、ペラム伯爵。
資料によれば、ペラム家は国の北西部に領地を有し、銅や銀の採掘で財を成しているそうだ。
三十三歳とまだ若い伯爵は、艶々と脂の乗った光る丸顔をしていた。
彼の横の席は夫人で、その隣には五歳になる長男、さらに隣には私が打ち負かすべき相手のディアナ嬢が座っていた。