公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
洗濯物を洗って干し終えると、お金と早成りの甘瓜が三つ入ったバスケットを手に、宿を出た。
甘瓜はメインストリート沿いに店を構える、伯爵家御用達の食料品店の息子がくれたもの。
彼はこの町の、ごく一部の金持ちの部類に入る男だが、ケチな性格をしているようで、私への貢物はいつも売れ残った野菜や果物。
この程度じゃ、手の甲にキスもしてあげない。
昨夜訪ねてきた彼から甘瓜をもらった私は、お礼だけ言って、目の前で裏口の戸をバタンと閉めてやった。
今、手元にあるのは、銀貨一枚と百五セルダ。
昨夜は際どい駆け引きをして、今日の薬代に足りない分を、男たちから引き出していた。
百セルダは銀貨一枚と同価値なので、これでメアリーに今日の薬を届けられる。
残念ながら、リッキーにベーコンを買っていけるほどのお金にはならなかったけれど……。
メインストリート沿いの薬屋に向かうと、町の様子がいつもと違っていることに気づいた。
道沿いにはたくさんの花が飾られて、塵ひとつ落ちていない。
崩れかけていた石畳は補修され、店や金持ちの邸宅の窓ガラスはピカピカに磨かれていた。