公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「なんでもないのよ。気にしないでください」と慌てて言ったのは、ディアナ嬢。
彼女は私の腕を軽く引っ張り、「大きな声で言わないでください。オルドリッジ公爵にお転婆だと知られたくないわ」と耳打ちしてきた。
無邪気で幼い印象の彼女に、もしや結婚は周囲が強く勧めるだけで、本人はさほどの興味もないのではないかという気もしていたが、違うようだ。
「ジェイル様がお好きなのね?」と小声で問いかけると、彼女の頬は赤く色づいて恥ずかしそうに首を縦に振っていた。
それを見た途端に、私の心の温度はさらに冷える。
無邪気に食べ物を粗末にする令嬢は、幼く見えても、ジェイル様の妻になりたいという野望をしっかりとその胸に抱いている。
自分の幸せばかり願うとは、なんて醜い性根かしら。
契約がなかったとしても、その恋をこの手で壊してあげたくなるわ……。
ジェイル様とペラム伯爵は難しそうな話題をふたりだけで楽しんでいる様子だったが、それもひと段落したみたい。
ペラム伯爵が、「それはそうと、お連れになっているクレア嬢のことですが……」と話題を変えようとしていた。