公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
名前を出されて、視線をペラム伯爵に向けたら、なにかをごまかすかのような、ぎこちない笑みを返される。
「いやはや、お美しいお嬢さんだと思いまして。オルドリッジ公爵の遠縁というお話でしたな。お年ごろとお見受けしますが、公爵とは、その……」
はっきりと言わずとも、私も花嫁候補のひとりなのかと聞きたがっていることは伝わってくる。
娘をジェイル様に嫁がせたいと考えているのだから、それは気になって当然だった。
私はなにも言わずに、ジェイル様が答えるのを待っている。
彼は注ぎ足された赤ワインのグラスを持ち上げて、シャンデリアの光に透かして色を確かめ、香りを嗅ぐ。
口をつけるまでに随分と時間をかけ、焦らしてから、ようやくペラム伯爵に答えを与えた。
「ご推測の通りです。クレアは美しい。この美貌に心奪われぬ男はいないでしょう」
ワインを流し込むようにして半分ほどを一気に飲んだ彼は、横目でチラリと私を見てほくそ笑む。
私は目を逸らし、恥ずかしがる振りをしつつ、口に出さずに毒づいた。
心にもないことを、よく言うわね……。