公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
なぜか急激に湧き上がる不快感に押し流されぬよう、深呼吸をして心を落ち着かせると、奥の椅子が並べられている方へと近づいていく。
今すぐにルイーザ嬢と対決しようという意図はない。
この舞踏会は私にとって初めての社交の場。
言葉遣いや立ち居振る舞いに常に気を配り、見知らぬ男性と何曲も踊らねばならないことに少々の疲れを感じている。
この状態でルイーザ嬢に仕掛ければ、ボロを出しそうで得策ではない。
父娘して一筋縄ではいかなそうな印象を受けることでもあり、彼女との決戦は次回にしようと考えていた。
それならばなぜ奥へ進んでいるのかというと、ルイーザ嬢の三つ隣の椅子に座っている、深緑色の燕尾服を着た若い男性貴族に用があるからだ。
フローレンス嬢を陥れる前に、彼にダンスに誘われ、それを『疲れたので後ほど』と言って断っていた。
その約束を果たそうとしている。
黙って隣を歩いているジェイル様は、またルイーザ嬢をダンスに誘うつもりではないかと思うけれど。