公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
追って行ってダンスを申し込んでも、怒りの中にいる彼女にひどく振られることは想像に容易い。
私をジェイル様に横取りされた格好の男性貴族は、これ以上の恥をかきたくなかったのだろう。
「踊るぞ」と言うジェイル様にエスコートされ、私は大広間の中ほどに移動する。
彼の左手が私の右手を取り、もう一方の手は背中に回され、引き寄せられる。
彼と踊るのは初めてではない。
これも学ばねばならないこととして、屋敷の中でダンスの指導をしてくれたことが数回あったから。
彼に合わせて三拍子のステップを踏み、ワルツを踊り出す。
他の男性と踊るより気持ちよく動くことができるのは、巧みなリードと、身を任せても大丈夫だという安心感のお陰だろう。
踊りながら「いいの?」と彼に聞く。
「なにがだ?」
「ダンスを申し込まれたら、断ってはいけないと本に書いてあったわ」
「基本はな。だが、お前を誘ったあの男は雑魚だ。末端貴族の三男坊など、なんの力も持たない。無視しても構わん」