公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
周囲が騒ついているのは、キスに気づかれているせいに違いない。
それでも彼は唇を離そうとしなかった。
ステップを踏んでいた足は完全に止まり、心臓が壊れそうに波打ち、心は勝手に弾み出す。
そんな自分の気持ちに抗おうと、顔を背けて唇を外した。
けれども顎先をつままれて、逸らした顔はすぐに戻されてしまう。
「そんなに赤い顔をして、まだ違うと言えるのか? 素直になればいいだろう。クレア、俺の妻になれ。かわいがってやるから」
「嫌よ。かわいがるのではなく、利用してやるからの間違いでしょう? その手には乗らないわ。目的を果たしたら、私はゴラスに帰るのよ」
周囲の注目を集めているのは分かっているので、声を潜めて言い返した。
私に断られても動じない彼は、「いつまでそう言っていられるか、見ものだな」と薄く笑い、再び私の手を取り踊り出した。
彼の策にはめられないようにと、色を醸すその瞳から視線を背け、俯いて同じリズムを刻む。
しかし、彼の襟元のピジョンブラッドのブローチが、真紅の輝きで私を惑わせようとしてくる。