公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

ディアナ嬢は「まぁ、お母様と弟にお土産を?」と嬉しそうな顔をして驚いているが、侍女は戸惑っている様子。

帰り際なら分かるけれど、今渡される意味が分からないと言いたげに、持たされた紙箱を気にしている。

そんな侍女に、私はにっこりと微笑みかけて指示をした。


「今すぐそれをペラム伯爵夫人に届けてくださいね。私が真心込めて焼いたアップルパイ。温かいうちに召し上がっていただきたいのよ」


つまりは、お土産持って今すぐ帰れということなのだが、侍女は困り顔でディアナ嬢に振り向き、ディアナ嬢も目を瞬かせていた。

「あの、クレアさん、それですと、マチルダは帰ることになるんですけど……」

戸惑いがちなディアナ嬢の問いかけに、私は「そうよ」と頷いた。


「マチルダさん、ご苦労様でした。ディアナさんは大人ですもの、おひとりでも平気よね? それとも、侍女に面倒を見てもらわなくては、お茶もできないお子様なのかしら?」

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