公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
壁の一部と斜めにせり出した庇がガラス張りで、この季節でも日中は夏のような暖かさだ。
素焼きのタイル敷きの床に、マホガニーの丸テーブルと、若草色の長椅子が置かれ、日光を浴びながら庭の草花を愛でることができる。
今は盛りを過ぎたコスモスと紅葉したナナカマド、それと温室がここから見えていた。
胸の前で指を組み合わせるディアナ嬢は、「気持ちのよいお部屋ですわね」と庭に視線を向けている。
彼女をガラスの壁際に誘導して、外を指差して説明した。
「あそこに温室が見えるでしょう? 育てているのはバラなの。ジェイル様はバラがお好きで、年中愛でていたいそうよ」
「そうなんですか!」と愛しの彼に関する情報に興味をそそられた様子の彼女は、自分の髪にそっと手を伸ばしていた。
彼女の髪を飾っているのは、マーガレットの造花のついた髪留め。
バラの髪飾りにしたほうがよかったのかしら?と、考えているのではないだろうか。
私は彼女から離れて、長椅子の後ろの壁際に置かれているコンソールテーブルの前まで行くと、花瓶に生けられているバラの中から、黄色のものを三本抜き取った。