公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「ディアナにやきもちを焼かせたかったんだと思うわ。舞踏会の帰りの馬車では、ジェイル様はずっとあなたのことを話していたのよ。花嫁候補者の中で、あなたはきっと最有力ね」
馬車内での話題がディアナ嬢のことだったのは事実だが、それは好意的なものではなく、今日のための策をふたりで話していただけだ。
そうとは知らずに、「まぁ!」と両手で赤くなった頬を挟み、恥ずかしそうにする彼女。
「そんなことないと思うわ。アクベス侯爵家のルイーザさんとは、何曲も踊っていらっしゃったもの、私なんて……」
謙遜しながらも期待は隠せないようで、身悶えして喜んでいた。
笑顔をキープしつつ、冷ややかな思いでいると、ドアがノックされてワゴンを押したメイドが入ってくる。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「ありがとう。やらせてしまってごめんなさいね。ここからは私がするわ」
私とメイドの会話を聞いているディアナ嬢は、不思議そうな顔をしている。
メイドが退室した後は、私がワゴン上の焼き菓子をテーブルに並べる。
ティーポットから白磁に蔦の模様の入った美しいカップに紅茶を注いで彼女のために給仕していると、「どうしてクレアがそんなことまでするの?」と、尋ねられた。