公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ディアナ嬢は、お茶の一杯も自分の手で淹れたことがないのだろうか?
私がしたことは、紅茶を注ぎ、メイドが用意してくれたものをただ並べたに過ぎない。
たったそれだけのことなのに貴族令嬢という生き物は、『そんなこと』に含めるようだ。
テーブルの上には、ジャムを添えたビスケットが三種類と、切り分けたアップルパイが彼女の分だけ並び、他はふたり分の紅茶のカップとシュガーポットが置かれている。
給仕を終えて元の椅子に座った私は、思わず侮蔑の視線を彼女に向けてしまう。
ビクリと肩を震わせた彼女に、にっこりと微笑みかけて不安を取り除いてから、「自分のことは自分でやりたいのよ」と説明した。
「お土産に持たせたものと同じで、そのアップルパイもビスケットも、私が焼いたものよ。どうぞ召し上がって」
料理はジェイル様に禁じられているのだが、今回はそれも計画の一部ということで、特別に許してもらえた。
デザートナイフとフォークを使ってアップルパイをひと口食べた彼女は、「とても美味しいわ」と褒めた後に、「ご趣味はお料理なの?」と、的外れな質問をしてきた。